糸のみほとけ
-国宝 綴織當麻曼荼羅と繍仏-
祈りで紡ぐ珠玉の名宝、百花のごとく集結!
・企画展会期:2018年7月14日(土)〜2018年8月26日(日)
・会場:奈良国立博物館

仏像や仏画はそれなりに触れてきたけれど、織物や刺繍というのはほとんど見たことがなかった。
入ってすぐにまず、天寿国繍帳が展示されている。もとは飛鳥時代のものを、鎌倉時代に修復しているらしいのだが、鮮やかに色が残る方が飛鳥時代のものだと書かれていた。もちろん多少は色褪せているのだろうけれど、1400年経ってなお残っているというのがすごい。他の一部の展示もそうだが、展示の仕方が工夫されていて、ものすごく近くで見ることができる。ガラスに顔をくっつけんばかりに見ると、糸の目までしっかりと見えて嬉しい。
織物や刺繍の目の細かさ、多彩な技術にも驚くし、どの作品もとても綺麗なのだけれど、やはり大きな作品は圧巻だ。一目一目は目を凝らしてやっと確認できるくらいなのに、その一針が集まって何メートルという大きな作品が出来上がっている。もうひとつ、大きさというか長さも含めてすごいと思ったのは、経文だ。一文字ずつ書いていくだけでもすごいのに、そのひとつの文字を何針も縫い上げて作り上げている。これらすべて祈りのこめられたものなのだと思うと、こんなにも強く祈る人がいるということとそれを伝えてきたお寺などの歴史に驚くしかない。当時どこまで庶民に縁のあったものかは分からないけれど、今の世では一般庶民でも見ることができてありがたい。
今回の展示の目玉である當麻曼荼羅について。中将姫が蓮の糸を染め、一晩で織りあげたという伝説が残されている。どう考えても生身の人間なら一晩では無理だなという大きさと細かさ。伝説はともかくも、たとえ何日かかったとして、何人が携わったとして、それはすごいことだと思う。糸を染め、細かく細かく織りあげていく作業は、祈りそのものなのだろうなぁ。
あまり縁のなかった織物や刺繍だけれど、とにかくすごく面白い展覧会だった。