この絵師、ただものではない!

・企画展会期:2017年4月11日(火)〜2017年5月21日(日)
・会場:京都国立博物館

海北友松

1533-1615
 狩野永徳や長谷川等伯と並び称される桃山時代の絵師。浅井家に仕える武家に生まれたが、名を残すために絵師として生きた。幼少期に東福寺に入り、後に狩野派の弟子として絵を学ぶ。絵師として頭角を現すのは60代になってからで、特に龍の名手として名声をあげた。

展示物紹介

第1章 絵師・友松のはじまり-狩野派に学ぶ-
・菊慈童図屏風
・山水図屏風
・柏に猿図
・西王母・東王父図屏風

第2章 交流の軌跡-前半生の謎に迫る-
・海北友松夫妻像(海北友雪筆)
・斎藤利三書状(石谷光正宛)
・花鳥図襖

第3章 飛躍の第一歩-建仁寺の塔頭に描く-
・山水図襖
・琴棋書画図屏風
・観瀑図
・松竹梅図襖

第4章 友松の晴れ舞台-建仁寺大方丈壁画-
・雲龍図
・花鳥図
・竹林七賢図
・山水図
・琴棋書画図

第5章 友松人気の高まり-変わりゆく画風-
・山水図屏風
・飲中八仙図屏風
・楼閣山水図屏風
・南泉斬猫図屏風
・野馬図屏風
・鷹図
・牧牛図屏風
・四季山水図屏風

第6章 八条宮智仁親王との出会い-大和絵金碧屏風を描く-
・檜図屏風
・浜松図屏風
・扇面貼付屏風

第7章 横溢する個性-妙心寺の金碧屏風-
・花卉図屏風
・寒山拾得・三酸図屏風
・琴棋書画図
・屏風画料請取状(妙心寺宛)

第8章 画龍の名手・友松-海を渡った名声-
・雲龍図屏風
・雲龍図

第9章 墨技を楽しむ-最晩年の押絵制作-
・禅宗祖師・散聖図押絵貼屏風
・鶴図
・海北友松書状(宝輪宛)

第10章 豊かな詩情-友松画の到達点-
・月下渓流図屏風

感想

 初めての夜間拝観。ゴールデンウィークなので人が多いかと思ったけれど、時間が良かったのかじっくりゆっくりと見ることができた。迫力のある屏風絵や襖絵が多く、照明を落とした展示室の雰囲気も良かった。
 全体をとおして思ったのは、いろんな絵を描くのだなということ。初期の、狩野派としての色が濃いざくざくとした岩肌や木々の雰囲気と、晩年の没骨で描かれるやわらかく浮かび上がるような表現はまるで違う。愛嬌のある人物の表現、勢いはあるけれどまるっとした線、繊細な動物の表現もあれば、簡略化した表現もあったり、とにかく色々な絵があって面白かった。ひとつひとつじっくりと見ていくと、どれもそれぞれの雰囲気で好き。
 特筆するなら、やはり龍の絵で、顔のはっきりとした線と体や雲のもやりとした対比が面白い。顔は結構ぶさいくだなと思ったりする。墨の流れがどこまで意図的なものなのかよく分からないけれど、立て掛けて描いたということはある程度偶然だけではないのかもしれない。暗い部屋に龍が浮かび上がって見えて、とてもよかった。
 「花卉図屏風」は、それまでの水墨画とはまったく違う雰囲気で、決して色数が多いわけでもないけれど、鮮やかで豪華絢爛という言葉がよく似合う。
 最後に展示されていた「月下渓流図屏風」はずっと見ていたいくらいだった。とても詩的で静かな絵。何も描かれていない余白に奥行きがあって、自分がそこに立っているみたいだ。月の音が聞こえてきそうなくらいしんとした絵だと思った。