たどり着いたのは、故郷への想い。

・企画展会期:2017年3月8日(水)〜2017年6月5日(月)
・会場:国立新美術館

アルフォンス・ミュシャ

1860-1939
アール・ヌーヴォーを代表する芸術家。モラヴィア(現在のチェコ共和国)生まれ。
27歳でパリに渡り、サラ・ベルナールとの出会いをきっかけに有名に。50歳で故郷にもどり、17年をささげた作品が『スラヴ叙事詩』で、縦6m、横8mという大きさの20点の作品群から成る。

展示物紹介

スラヴ叙事詩
・原故郷のスラヴ民族 トゥーラニア族の鞭とゴート族の剣の間に
・ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭 神々が戦いにあるとき、救済は諸芸術の中にある
・スラヴ式典礼の導入 汝の母国語で主をたたえよ
・ブルガリア皇帝シメオン1世 スラヴ文学の明けの明星
・ボヘミア王プシェミスル・オタカル2世 スラヴ王族の統一
・東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン スラヴ法典
・クロムニェジーシュのヤン・ミリーチ 「言葉の魔力」―娼館を修道院に改装する
・グルンヴァルトの戦いの後 北スラヴ民族の連帯
・ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師 「言葉の魔力」―真理は打ち勝つ
・クジーシュキでの集会 「言葉の魔力」―ウトラキスト派
・ヴィートコフ山の戦いの後 神は力ではなく、真理を体現する
・ヴォドニャヌイ近郊のベトル・ヘルチツキー 悪に悪で報いるな
・フス派の王、ポジェブラディとクンシュタートのイジー 権威を求める争い―民主制の国王イジーと神政のローマ
・ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛 キリスト教世界の盾
・イヴァンチツェの兄弟団学校 クラリツェ聖書の印刷
・ヤン・アーモス・コメスキーのナールデンでの最後の日々 希望の明滅
・聖アトス山 正教会のヴァティカン
・スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い スラヴ民族復興
・ロシアの農奴制配し 自由な労働は国家の礎
・スラヴ民族の讃歌 スラヴ民族は人類のために

ミュシャとアール・ヌーヴォー
・サラ・ベルナール
・ジスモンダ
・メディア
・四つの花「カーネーション」「ユリ」「バラ」「アイリス」
・四芸術「詩」「ダンス」「絵画」「音楽」
・蛇のブレスレットと指輪
・ラ・ナチュール
・クオ・ヴァディス
・ハーモニー

世紀末の祝祭
・自力I
・創造力―ペルンシュティナのヤン

独立のための闘い
・ヒヤシンス姫
・ロシア復興
・「スラヴ叙事詩」展

習作と出版物
・『主の祈り』
・イヴァンチツェの想い出
・スラヴの民族衣装を着た少女

感想

 とにかくすごかった。入ってすぐにスラヴ叙事詩の展示会場となっており、3つのコーナーに分かれて大きな作品が展示されている。大きいということは知っていたが、ここまで大きいとはと圧倒された。
 ひとつひとつの作品を見ていくと、まずその描写の美しさに息を飲む。これだけの大きさの絵を、こんなにも丁寧に描けるのかと感嘆。どの絵も綺麗なのだが、やはり1作目「原故郷のスラヴ民族」が一番好きだ。青色の表現が本当に綺麗で、見れば見るほど引き込まれる。物悲しいような、切ないような気持ちになる。
 タイトルにもなっている人物以外に目線が行くような仕掛けであったり、まるで透明なガラスに二重に描かれたような明暗の表現もあったり、それぞれの絵に色々な表現があって面白い。他にも特に気に入った作品はいくつかあったけれど、やはり20点という連作のもつ力がすさまじい。それだけに、ミュシャがこの叙事詩にこめたメッセージの大きさを感じる。スラヴ民族のことはほとんど知らないし、世界史も苦手なので、背景の知識がほとんどないのが悔やまれる。
 スラヴ叙事詩以外の作品は、以前堺の美術館で見たことがあるものもあって、新鮮という感じはなかったけれど、やはり素敵だなと思う。スラヴ叙事詩のメッセージ性との対比が面白くもある。