不空院

山号:春日山
宗派:真言律宗
本尊:不空羂索観音

歴史

 「大乗院寺社雑事記」によれば、奈良時代に鑑真が住んでいたとある。
 平安時代に弘法大師空海が興福寺南円堂建立の試みに八角円堂を建立したとされる。
 鎌倉時代には戒律復興運動の場となり、不空院円晴、西大寺叡尊、唐招提寺覚盛、西大寺有厳の四律僧がここで戒律を講じたといわれる。
 江戸時代、安政の大地震により大半の堂宇が失われ、仮堂のみの荒廃した状態となる。
 大正時代、三谷弘厳和尚が現本堂を建立、寺観を復興させた。
 縁切り寺、駆込寺としての役割も果たし、芸妓の照葉が昭和の初めに駈け込み、その後久米寺にて出家し、智照と名乗り嵯峨祇王寺の庵主となっている。

伽藍

・山門
・本堂

仏像

本尊 不空羂索観音

鎌倉時代 重要文化財
 春日大社の第一の神タケミカヅチの本地仏とされる。像の前には勾玉、鏡、鹿がおかれ、体も鹿の衣を纏っている。
 一面三目八臂(顔が1つ、眼が3つ、手が8本)の像。正面の手は合掌し、他は羂索、払子、花の開いた蓮華、錫杖を持つ。
 「不空」は「空しからず、人々をもれなく救済する」ことを、「羂索」は「鳥獣魚を捕らえる縄網」を意味し、人々をひとり残らず救済することを象徴。
 東大寺三月堂本尊の立像、興福寺南円堂本尊の座像とあわせて「三不空羂索観音」と呼ばれている。

弁財天女

室町時代
 不空院の守護神。八本の腕にはそれぞれ、弓・矢・槍・刀・独鈷・輪宝・鍵・宝珠をもち、頭上の鳥居型宝冠には宇賀神の姿がある。
 弁財天は才知と芸術、福徳と豊穣の女神。不空院の弁財天は特に弱い女の人の救済と庇護に大きな力をもたらす女神として慕われている。2臂像は琵琶を抱え、バチを持って奏する音楽神の形をとり、8臂像は武器を持つ戦神。

弘法大師

 平安時代に、この不空院にお住まいになったと伝えられ、当時興福寺にあった不空羂索観音の複製像を、本尊として八角円堂に安置。

えんきりさん、えんむすびさん

えんきりさん(法竜大善神)、えんむすびさん(黒竜大神・市岐姫大神)が、阿吽のタヌキに守られて一緒に祀られている。

アクセス

奈良県奈良市高畑町1365
近鉄奈良駅またはJR奈良駅から市内循環バス破石町下車約7分